今年の夏に、北海道のアーティストによる展覧会を企画しています。
もちろん上海にて。
10人くらいの北海道のアーティストを、上海の複数のスペースで展示する予定です。
なぜ北海道?
私が北海道出身だからです。はい。
郷土愛以外のなにものでもありません。
私が北海道を出てから10年あまり。
なにか地元と繋がりのもてる仕事をしたいとずっと思っていました。
でも何ができるのか、何をしていいのか良くわからず、地元がそばの名産地なので、上海でそばの輸入を!なんて考えたこともありますが、さすがに専門外で良くわからず断念。。
しかしここ数年、周りの人たちの暖かいサポートもあり、上海でかつアートの分野であれば、私でもできることが少しずつ増えてきたので、今年の目標の一つに、全くアテは無かったのですが「北海道とかかわりのあるアート関係の仕事を一つ実現させる」というのを立てました。
そして年始に札幌を訪れた際、知人の紹介で端聡さんというご自身もアーティストであり、札幌でさまざまな芸術イベントのディレクションや、若手作家をプロデュースされている方とお会いしました。
そこで、札幌と上海での芸術分野での交流の可能性について伺ったところ、幸運なことに興味を持っていただくことが出来、少しずつですが展覧会実現に向けて話が進んでいます。
北海道の現代アーティストというと、何度も上海でお会いしている鈴木涼子さんと、前回のベネチアビエンナーレに参加されてた岡部昌生さんしか知りませんでしたが(恥ずかしいことに)、調べたりお話を聞いてみると、興味深い作家がたくさんいます。
しかも端さんを中心に、札幌ビエンナーレの実現に向けて行政や教育機関を巻き込んで動き出しているとのこと。
メディアやマーケットだけを見ていると、日本のアートシーンは東京にしかないような感じがしますが、北海道でも若いアーティストがどんどんでてきて、何かやってやろうという動きがあり、それを支えたいと思う人たちがいることがわかり、非常に勇気付けられました。
都市部で生まれ育った人にはわからない感覚かもしれませんが、日本の地方は洒落にならないほど危機的な状況にあります。
なにせ人がいない。
私の通っていた小学校は数年前に閉校になりましたし、生まれ育った地域は「65歳以上人口比50%以上」となる"限界集落”というカテゴリーに入っているらしいです。限界集落の次は消滅集落となるらしい。おいおい。。
日本人の人口が減少している中、北海道の片田舎の町が消えかかっているなんてことは、当然といえば当然です。
税金を無理に使ってまで消え行く田舎町を保護することに何の意味があるのか?と聞かれても、正直今の私には何も反論できません。私が生まれ育った場所で家族や友人がいるから、としか言えません。
でも地元に帰ったとき、毎回異様な不安感に襲われます。
故郷の将来に対する不安はもちろん感じるのですが、それ以上に、もしかしたら今自分のいる(上海での)環境が間違っているんじゃないだろうか、という不安です。
上海にいるときは、「日本はもうダメなんじゃないか」とか、「日本語ですら滅びつつある!」なんて話をしてるのに、実家に帰ると完全に地元のムードに飲まれてしまし、全く別の世界にいる感覚になります。
幼なじみや同級生は、地元で地に足をつけて頑張っているのに(実情はしらんけど)、このまま自分は外でフラフラしていていいのだろうか? と。地元では農業に従事している人が多く、かえって地に足が着いている感じがします。
そして帰省するたびに、本気で実家に戻ろうかと考えてしまいます。それが人としての幸せなんじゃないか・・と。
そのときは、グローバリゼーションとか、ITの進化とか、覇権国とか、アートインダストリーなんて、全く関係ない別次元の話のような気がしてしまいます(実際は影響を与えてはいる部分は計り知れないのですが・・)。
それくらい上海と地元はanother worldで、困ったことにどちらの世界にも魅力があります・・。
でもおそらく、地元に帰って何かをするというのは、今の私の仕事では無く、多くの幼なじみや友人が地元で頑張ってるなか、たまたま長く外で働いている私は、私にしかできない事をするべきだと思うのです。
そして幸い、北海道には可能性があります。
気付いていない人が多いですが、北海道はアジアの多くの国の人たちにとって憧れの場所です。
食べ物がおいしく、良質な雪でスキーやスノーボードが出来、温泉があり、綺麗で、自然がすばらしく、国際空港があってインフラが整っている場所は、アジアでは北海道しかないのです。
50年後の札幌の気温は、今の東京と同じになるという学者がいたそうです。もし本当にそうなれば、物理的に北海道以南に日本人は住み辛くなります。
そしてなんと、いま中国では北海道ブームが起きています。
中国で大ヒット映画から北海道観光ブーム
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp1-20090221-463494.html
年末に公開された、北海道をロケ地に撮影された中国の映画大ヒットし、多くの中国人が北海道にあこがれの念を抱いています。
「非誠勿擾(本気で付き合える人求む)」
これを逃さない手はありません。
最近雑誌で見た中国人向けのアンケートでは、日本で知っている地名という質問に対して、なんと北海道は東京に次いで2位でした。
でも北海道は、このチャンスをまだまだ活かせていないと感じます。
自分達だけじゃ生き残っていけないんだから、隣のこんなに近いところに無限の可能性のある国があるのに、どうしてもっとうまく付き合っていかなきゃだめだろう、と。
話が大分それましたが、私は別に観光大使になりたいわけではなくて、文化を通じた北海道と中国のつながりを作っていきたいと思っているだけです。その活動を通じて、少しでも北海道に中国のエネルギーを送りたいのです。
今回考えているのは、北海道のアーティストを上海で発表することですが、その次は中国のアーティストを北海道で発表し相互の交流を図りながら、アートを通じた地域間のあらゆる分野での価値の創造を目指していきたいと考えています。
日本では多くのメディアが中国バッシングをしているようですが、諸問題はおいておいて、中国にはまだ、今日本に一番必要な「希望」があります。世界中が金融危機でダメージをうけていようと、多くの中国人がまだまだ将来に対して楽観的で、希望を持っています。それが多くのエネルギーを生んでいます。
いくら清潔でマナーが良くても、希望がなければ人は生きていけません。
そのエネルギーを、少しでも北海道へ伝えられたらと思っています。
そんな話をここ2ヶ月ほどいろんな人に話していたら、非常に有難いことに予想以上に多くの人から関心を示していただき、アートというジャンルに限らず他の産業も巻き込んでなにか出来ないか、という話が進んでいます。
オープニングレセプションで北海道の料理を振舞うとか、作品置き場には北海道の家具を使うなどなど。
私自身、全然違う業種から現代アートというものに出会い、これからの時代を切り開いていく可能性を感じました。その直感を信じていまも活動をしていますが、それはいわゆるスノッブな「アート業界」という括りの外で本来の力を発揮するのだと感じています。
そしてその可能性を試すフィールドが、地元の北海道に広がりつつあることがとても嬉しく、なんとしても今回の企画を実現して成功させたいと思っています。
北海道にゆかりのある方を、一人でも多く巻き込んで、大きなうねりを作っていきたいと思っています。
どんな形でもかまいません。なにかご協力いただける方がいらしゃいましたら、何卒、何卒よろしくおねがいいたします!
10 件のコメント:
素晴らしいです。道産子バンザーイ!
うす!万歳!
上海での北海道現代アート展、いいですね!
スポンサーもつくんじゃない?!
応援します。
ヂョンさん
コメントありがとうございます!
少しずつですが、ドリプラで発表できなかった幻の「あの夢」に向けて進んでいます(笑)
なんとか上海からきっかけを作っていきたいと思ってます!!
健太様
ひら農園へのコメント感謝します。
おっしゃるように、たとえ故郷から遠く離れていても、健太君には健太君のやりたいことがあり、健太君にしかできないこともありますね。
正直、残るものは残るものの使命感…みたいな崇高な意識があるのではなく、たとえば都会になじまないとか、通勤時に地下鉄の乗り降りに一日の体力のほとんどを使ってしまうことをナンセンスに思ってしまうとか、品揃えがよくても野菜がまずいのが我慢できないとか…
つまり、刺激的で便利な生活より安穏と暮らしていける気軽さ…限界集落にいる者たちは競争社会からドロップアウトした者たちの吹き溜まりなのかもしれません。(←ちょっと言い過ぎたか…)
やはり、地元小学校が廃校になったのは大きかったでした。田舎の小学校は、単に学校教育の現場ではなく地域のセンターコミュニティーを担っているのですから、それだけで集落地域の機能が果たせなくことは想像できないことではなかったのです。
校長先生や教職員にいかに頼り切っていたか…今更ながらそんな部分を地域人がトレーニングできていなかったことを思い知らされます。
ただ、枯れ進む地域にあっても、それでもなんとかなっているのはどうしてだと思いますか?
地域のコミュニケーション力のなせるところ?開き直り?行政の支援や税金投入があるから?…
実は意外と本人たちは病んでいないのです。
限界集落にあっても”楽しく”暮らしていけるのです。
老人会なんかすごいパワーですよ!ちょっと前の青年団より輝いていたりします。
実はこの”楽しく!”は大事~
楽しそうだと人が集まってきます。人が集まると新しい可能性が創造できます。
限界集落でも、そんな可能性って結構あったりします。(←可能性のある限界集落ってこと自体恵まれているのでしょうが…)
たぶん地元民の中では、霞が関や大手町や永田町に出かけることがより多い自分には、そんな北海道やふるさとの良さがよくわかります。もちろん弱点も…
地元民がふるさとの良さに気付いていないこともよくわかります。
不幸なのは、『本気で付き合える』ことができる人が周りにいないことでしょうね~
それは、都会でも田舎でも一緒ですが…
健太君ができること…
そんな内弁慶でも暖かな北海道と、無限の可能性を秘めたな中華の橋渡しをすることでしょうか~
若い力に期待します!
平先生
ご丁寧なコメントありがとうございます。
老人会に元気があるというのはうれしいニュースですね。
うちの実家の界隈も、ばーさん連中がまだ健在で、帰省するたびに愚痴だの説教だのを垂れてくれるので(笑)、まだまだ元気がある感じがします。
なので、逆にその後がかなり心配になってしまいますね。。
>そんな内弁慶でも暖かな北海道と、無限の可能性を秘めたな中華の橋渡しをすることでしょうか~
>若い力に期待します!
ありがとうございます。
自分に出来ることから少しずつ進めていきたいと思います。
非常によく気持ちがわかります。
地元に帰ったときの、あの心情。
でもあの状態になれること自体、俺らの価値を示しているというか、あれを感じられる人間だからこそできることがあるんじゃないかと、俺は思うんだよね。
それはまず、何かと何かを繋げられるってこと。
大変な仕事になると思うけど、陰ながら応援してますよ。
コメントありがとうございます。
>でもあの状態になれること自体、俺らの価値を示しているというか、あれを感じられる人間だからこそできることがあるんじゃないかと、俺は思うんだよね。
そうそう、そのことに私は最近気がつきました。これはもしかしたらすごい価値なんじゃないかって。
お互い頑張りましょう!
鳥本さん、ご無沙汰しております。
ご活躍のご様子、嬉しく思います。
故郷への想いって、世界共通の人の感情だと思います。そう言うモチベーションと、中国での北海道ブームが重なって、イベントが大成功することを祈念しております。
私も北海道へは、過去何十回と仕事で行っており、知人もかなりいますので、そのイベントの際には、PRいたしますので、ぜひ、教えてください!
馬渕さん
どうもご無沙汰してます。
何十回とは、すごいですね・・。
展覧会、細かいことが決まりましたらご連絡させていただきます。
どうもありがとうございます!
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